時価総額でサンリオ超え!「LABUBU(ラブブ)」がハリウッド映画化へ、ポップマートとソニーが挑むキャラクターIP世界戦略 こんにちは!当ブログ「ぬいぐるみのこと。ビジネスと社会」へようこそ。 アートトイやぬいぐるみの世界で、いま最も勢いのあるキャラクターといえば、ギザギザの歯といたずらっぽい笑顔が特徴のモンスター「LABUBU(ラブブ)」ではないでしょうか。アジアを中心に世界中で爆発的なバイラルヒットを記録しているこの人気キャラクターが、なんとハリウッドで長編映画化されることが決定しました! 仕掛けるのは、中国発のデザイナーズトイ大手「ポップマート(POP MART)」と「ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント」。単なる流行のグッズから、世界的なエンターテインメント・フランチャイズへと脱皮を図るポップマートの動きは、キャラクタービジネスの歴史を塗り替えるほどの経済的インパクトを秘めています。今回は、このビッグニュースの本質と社会背景をわかりやすく整理して解説します。なお、この記事は国際通信社「ロイター(Reuters)」の報道を参考にしています。 ニュースの概要:「パディントン」の監督も参戦!LABUBUが実写+CGIでスクリーンへ ポップマートの発表によると、今回の映画プロジェクトは実写とCGI(最高峰の3Dグラフィックス)を融合させたハイブリッド作品として、初期開発がスタートしています。驚くべきはその制作陣の豪華さです。 大ヒット映画『パディントン』シリーズや『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』を手がけたポール・キング監督がプロデュース・監督・共同脚本を担当。さらに、ブロードウェイの傑作『ディア・エヴァン・ハンセン』の脚本家スティーヴン・レヴェンソン氏が参加し、LABUBUの生みの親であるアーティストのカシン・ルン(Kasing Lung)氏も製作総指揮として名を連ねています。 玩具メーカーから「エンタメ企業」への本格的な転換 ポップマートにとって今回の映画化は、コレクターズトイの枠を超え、映画やテーマパーク、多角的な文化コンテンツへと自社IP(知的財産)を拡張するための歴史的な一歩です。同社は今年、ロンドンに欧州本社を設立することを発表したばかり。今回のソニーとの提携により、欧米市場を含めたグローバル展開をさらに加速させる狙いがあります。 目指すはディズニーの戦略:人気キャラクターを不朽のブランドへ ロイター通信の取材において、ポップマートが描く今後のビジネスモデルと市場での圧倒的な立ち位置について、以下のように報じられています。 ポップマートは、LABUBUの人気を持続的な成功へと導くため、ディズニーの戦略(プレイブック)を参考にしていると明かしている。LABUBUの世界的な人気により、同社の株価は過去1年で64%も上昇。香港市場における時価総額は、米ハズブロ、米マテル、そして日本のサンリオの時価総額を合算した金額を上回る規模にまで膨らんでいる。 玩具業界の伝統的な巨人たちや、あのサンリオをも上回る市場価値を叩き出している背景には、一過性のブームに依存せず、ディズニーのように「物語(コンテンツ)」を付与してキャラクターの寿命を何十年にも引き延ばそうとする、徹底したIP戦略があります。 背景にある「アートトイ」の成熟と、世界に広がる大人の感情消費 ポップマートとLABUBUがここまで急成長した背景には、大人たちの間で定着した「アートトイ消費」と「感情消費(エモーショナル・エコノミー)」の成熟があります。 これまでのぬいぐるみやフィギュアは、既存のアニメや映画のストーリーがあって初めてヒットするものでした。しかし、ポップマートの玩具は「原作の物語を持たない」状態で発売されます。ストーリーの余白があるからこそ、購入した大人のファンは、自分の日々の感情や孤独、癒やしのストーリーをキャラクターに自由に投影することができました。 バイラル(口コミ)から持続可能なビジネスへのステップアップ SNSの拡散によって瞬く間に世界に広がったLABUBUですが、SNSのトレンドは移り変わりが激しいものです。そこで重要になるのが、今回の「映画化」というコンテンツの肉付けです。映画を通じてキャラクターの背景や世界観を深く提供することで、消費者は単に『可愛いから買う』段階から、キャラクターの『ファンとして長く愛し続ける』段階へと移行します。商社やエンタメ企業が巨額の資金を投じるのも、この感情の持続性が生み出す莫大なライセンス収入(利権ビジネス)に確実な勝算があるからです。 サンリオや日本のアニメIPに与えるインパクト 日本のキャラクタービジネスは、サンリオの組織改革や「ちいかわ」の躍進に見られるように、ファンの推し活に寄り添う形で成長を続けてきました。しかし今回の、中国発のIPがハリウッドの資本とトップクリエイターを巻き込んで世界規模のエンタメ作品へと昇華していくスピード感は、日本のキャラクター業界にとっても大きな刺激となるはずです。今後は「日本発のKAWAII」と「中国発のデザイナーズトイ」が、世界の大人たちの『癒やし市場』をめぐって、より高度なコンテンツの戦いを繰り広げることになりそうです。 【筆者コメント】この記事を読んで感じたこと 時価総額でサンリオやハズブロを合算した規模を超えたという数字を見て、ただただ圧倒されました。当初は『ちょっと不気味で可愛いモンスター』としてSNSで流行していたLABUBUが、パディントンを撮った超一流の監督の手でハリウッド映画になるなんて、数年前には誰も想像していなかったのではないでしょうか。人間関係や不確実な社会に疲れた現代人が、あのLABUBUのいたずらっぽいギザギザの歯の笑顔に救われ、何万円ものお金を投じる。そんな『大人のリアルな感情の揺れ』が、ついに映画産業の巨頭ソニーを動かし、巨大な経済の歯車を回し始めた事実に、感情消費ビジネスの持つ底知れないパワーを感じます。スクリーンの中で生き生きと動くLABUBUが、世界中の人々の孤独やストレスをどうパッケージし、どんな優しい物語を届けてくれるのか、今から公開が待ちきれません! まとめ:カワイイが世界を席巻するエンタメの新時代へ ポップマートとソニーによるLABUBUのハリウッド映画化は、単なるキャラクターグッズの流行を超えて、世界のキャラクターIPビジネスが新しい次元に突入したことを告げる象徴的なニュースでした。モノとしてのぬいぐるみやフィギュアに「物語」という命が吹き込まれることで、私たちの日常の癒やしはどのように変化していくのか。これからのグローバルな展開を、ビジネスとカルチャーの両面からワクワクしながら見守っていきたいですね。 参考記事:Pop Mart and Sony team up for Labubu film to expand viral toy’s reach – Reuters 投稿ナビゲーション 欧州で「新・玩具安全規則」が施行:デジタル製品パスポートが義務化され、ぬいぐるみの素材がスマホで可視化される時代へ 製造ミスから奇跡の大ヒット!中国の若者が「泣き顔の馬」のぬいぐるみに熱狂する社会心理と、進化する情緒価値市場