【ポップマート急成長の裏側】「MOLLY」誕生20周年イベントから読み解く、中国ブラインドボックス市場と大人を魅了する「サプライズ経済」 こんにちは!当ブログ「ぬいぐるみのこと。ビジネスと社会」へようこそ。 近年、アジアを中心に世界のトイ市場やキャラクタービジネスのあり方を根底から塗り替えている一大トレンドがあります。それが、箱を開けるまで中に何が入っているか分からない「ブラインドボックス(中国版ガチャガチャ)」です。 現在、中国・北京では、このブラインドボックスブームの絶対的な火付け役となった人気キャラクター「MOLLY(モーリー)」の誕生20周年を祝う大規模な展示イベントが開催され、多くのファンで賑わっています。今回のニュースは、MOLLYや「LABUBU(ラブブ)」といった世界的IP(知的財産)を次々とヒットさせ、驚異的な急成長を遂げた中国企業「ポップマート(POP MART)」の躍進の裏側と、現代の消費者が熱狂する「サプライズ経済」の仕組みについて、経済・消費の視点からわかりやすく解説します。なお、この記事は「テレ朝NEWS」の報道を参考にしています。 ニュースの概要:北京で「MOLLY」誕生20周年イベント開幕、ブームを牽引するポップマートのキャラクター戦略 北京市内にて、中国のブラインドボックス市場のアイコンとも言えるキャラクター「MOLLY(モーリー)」の誕生20周年を記念する展示イベントが始まりました。来月19日まで開催予定のこのイベントには、多くのZ世代やファミリー層が足を運んでいます。 MOLLYは、香港出身のアーティストが2006年に発表した、ふくれっ面と大きな目が印象的な「絵を描く少女」をモチーフにしたキャラクターです。このMOLLYを筆頭に、野性的な魅力でタイの王室をはじめ世界中で社会現象を巻き起こしている「LABUBU(ラブブ)」など、数々の人気キャラクターのブラインドボックスを展開して巨万の富を生み出したのが、中国の玩具メーカー「ポップマート(POP MART)」です。彼らは独自の「アートトイ×ブラインドボックス」という方程式で、またたく間にグローバル企業へと成長を遂げました。 「何が出るか分からない」ドキドキ感がもたらすリピートの魔法 現地の熱狂的なファンは、MOLLYをお嬢様のような洗練されたイメージ、LABUBUを少し尖った野性的なイメージとして捉え、それぞれの個性を楽しんでいます。インタビューに応じた北京市民は、「何が当たるか分からないドキドキ感」こそが最大の魅力であり、お目当てではない商品が当たったとしても、それが意外な新しいお気に入りになる楽しさがあると、ブラインドボックスならではの消費体験を語っています。 「誰もが生活にサプライズを求めている」トップが語るヒットの本質 テレ朝NEWSの取材のなかで、ポップマートの王寧(ワン・ニン)CEOが語った、自社の強みとブームの背景にある現代人の心理についての言葉が紹介されています。 「当社の最大の強みは、非常に多くの世界中のアーティストが参加してくれていて、私たちが生み出すコンテンツを皆さんが気に入ってくれていることだ。誰の生活にもサプライズは欠かせず、ブラインドボックスの販売を通じて、買い物をする度にまるで『自分自身へのプレゼント』となるような体験を提供していきたい」 単におもちゃを売るのではなく、「日常のワクワク感」という体験そのものを売る姿勢が、同社の急成長を支えていることが分かります。 背景にある「体験経済(エクスペリエンス・エコノミー)」と、大人の心を満たす「自己投資型消費」 このポップマートのビジネスモデルとブラインドボックスの爆発的な流行を消費経済の視点で紐解くと、現代の若者がおもちゃに求める価値が「所有」から「エモーショナルな体験」へとシフトしている背景が見えてきます。 かつてフィギュアやぬいぐるみは、子ども向けのもの、あるいは一部の熱狂的なマニア(オタク層)が収集するものという認識が一般的でした。しかし、ポップマートは世界中の新進気鋭のアーティストと契約し、洗練された「アートトイ(デザイナーズトイ)」としてリブランディング。さらにそれを1,000円〜2,000円前後という、大人にとって「手頃だけど、ちょっと贅沢」な価格帯のブラインドボックス形式で販売しました。 ストレス社会における「自分へのご褒美」という最強の免罪符 競争が激しく、変化の速い現代社会を生きる大人たちにとって、私生活にちょっとした刺激や「サプライズ」を見つけることは簡単ではありません。王寧CEOが指摘するように、ブラインドボックスを開ける瞬間のアドレナリンが出るような高揚感は、日常のストレスを忘れさせてくれる手軽なエンターテインメントです。 何が出るか分からないランダム性は、一見すると非効率ですが、現代人にとっては「自分へのご褒美(ギフト)」というエモーショナルな価値に変換されます。ポップマートは、おもちゃという物質ではなく、「偶発的な幸せ」をカプセルに詰めて流通させることで、世界規模の巨大な「サプライズ経済圏」を創出したのです。 日本のおもちゃ市場と「ぬいぐるみ・アートトイ」の未来 日本は「カプセルトイ(ガチャガチャ)」というブラインドミニチュア文化の元祖であり、街中に何百台ものマシンが並ぶ一大市場を持っています。しかし、これまでの日本のガチャガチャは数百円の手軽な「ミニチュア・雑貨」が主流でした。ここに今、ポップマートが展開するような高単価でデザイン性の高い「ハイエンド・アートトイ」や「本格的なミニぬいぐるみ(プラッシュキーチェーン)」のブラインドボックスが逆輸入の形で上陸し、日本のZ世代の間でも大流行しています。カワイイ文化の土壌が肥沃な日本において、この「ブラインド形式のぬいぐるみ・フィギュア」は、コレクション欲を刺激する新たな高収益ビジネスとして、今後さらに日本のIPビジネスにも大きな影響を与えていくでしょう。 【筆者コメント】この記事を読んで感じたこと MOLLYが誕生してもう20年も経つことに驚くと同時に、香港の小さなアートから始まった少女のキャラクターが、いまや巨大な上場企業の基盤となり、世界中を熱狂させている事実にキャラクタービジネスの夢を感じます。王寧CEOの『買い物をする度に、まるで自分へのプレゼントになるような体験を』という言葉には深く共感しました。私たちは合理的な社会に生きているからこそ、どこかで『計算できない驚き』を求めているんですよね。最近のポップマートは、プラスチックのフィギュアだけでなく、LABUBUをはじめとする『ぬいぐるみ素材』のブラインドボックス(プラッシュマスコット)にも非常に力を入れており、バッグに付けて持ち歩く大人が街中に溢れています。触って癒やされるぬいぐるみと、開けるまで分からないブラインドのドキドキ感が合体するなんて、現代人の心を掴むツボを完璧に押さえていて、本当に見事な戦略だと脱帽します。 まとめ:偶然の幸せを売るビジネスが、グローバル市場を席巻する 北京で開かれているMOLLYの20周年イベントは、ポップマートが築き上げた「アートトイ×ブラインドボックス」という文化が、一時の流行を超えて定着したことを示しています。消費者が「モノ」の機能性だけでなく、購入するプロセスの「ドラマや興奮」に価値を見出すいま、このサプライズを仕掛けるエンタメ型ビジネスは、今後もおもちゃ業界やキャラクター経済の最前線を走り続けるはずです。箱を開けるあのワクワクが、次にどんな世界的ヒットを生み出すのか楽しみですね。 参考記事:中国で大人気「ブラインドボックス」火付け役キャラクターの歴史たどる展示イベント 北京 – テレ朝NEWS (YouTube) 投稿ナビゲーション 刑務所にぬいぐるみは必要か?凶悪犯罪が低年齢化するスウェーデンの葛藤と「安心の経済・社会学」